【~ Domaine Derain/ドメーヌ・ドゥラン訪問訪問記:2025年7月8日火曜日午後~】
フランス:ブルゴーニュ地方・サントーバン村
ブルゴーニュの名醸地を巡る旅
午前中は、ブルゴーニュのボーヌにある「フィリップ・パカレ」を訪問し、そこで昼食をいただいた後、車で「コート・ドール」の丘陵を眺めながらグラン・クリュ街道を南へ向かう。右側には葡萄畑が広がり、赤ワインの名産地「ポマール」「ヴォルネイ」の看板が次々と現れる。
さらに進むと、温暖な気候を生かした白ワインの産地「ミュルソー」「シャサーニュ・モンラッシェ」へ。偉大なシャルドネの産地を初めて車窓から観た私は、興奮を抑えきれなかった(前回の訪問ではバスで熟睡してしまい、記憶がない…)。
サントーバン村とドメーヌ・ドゥランの雰囲気
ここでグラン・クリュ街道を離れ、コート・ドールの丘陵地に向かって右折。車は葡萄畑の間を縫うように進み、丘を登っていく。丘陵が途切れ、谷のような場所に今回の目的地「サントーバン村」があり、そこに「ドメーヌ・ドゥラン」が佇んでいる。
ブルゴーニュの中心部にある企業的なワイナリーとは異なり、サントーバン村は牧歌的な趣が残る。昔ながらの農家がワイン造りをしていたような、素朴で温かみのある雰囲気が漂う。
「ドメーヌ・ドゥラン」もまさにそのような「小さな工房」のような佇まいだ。ワイナリーに到着すると、背が高くがっしりとした体格のジュリアン・アルタベールさんが迎えてくれた。
彼は2002年からこのワイナリーで働き、2017年にドミニク・デュランさんの引退に伴いワイナリーを引き継いだ。フリースに短パンというラフな服装ながら、精悍な印象で、農作業の先頭に立つ情熱的な姿勢が伺える。
ワイナリーの内部は、まるで日本の余市や東御にある小さなワイナリーのような親しみやすい雰囲気だ。スペースは狭く、入り口には大型トラクターが2台停まり、室内には醸造器具、ファイバータンク、詰める前の空瓶や出来上がったばかりのワインボトルが所狭しと並ぶ。上部には棚が組まれ、さまざまな資材が整然と置かれている。
概要
「ドメーヌ・ドゥラン」は、ビオディナミ(自然派)のワイン造りで知られるワイナリーだ。
◆設立: 1988年にドミニク・ドゥランによって設立。元々はトネリエ(樽職人)だった彼は、ビオディナミ農法の先駆者マリア・トゥーンの影響を受け、1989年からビオディナミ農法を導入。少量生産で高品質なワイン造りを追求している。
【ワイン造りの特徴】
◆ビオディナミ農法:牛糞、シリカ、植物由来の調合剤を使用し、馬による耕作を行うなど、土壌と自然環境への配慮を徹底。
◆醸造方法:自然派ワインにこだわり、最小限の介入を原則とする。白ワインはオーク樽で1~8ヶ月発酵後、澱と共に次の収穫まで熟成。赤ワインは12~18ヶ月木製タンクで熟成。硫黄(SO2)の添加はほぼ行わず、テロワールを純粋に表現したワインを目指す。
◆葡萄品種と畑:シャルドネ、ピノ・ノワール、アリゴテを使用。畑はサントーバンやモンラッシェ周辺の丘に位置し、粘土質や鉄分を含む土壌が特徴。
ワイナリーの施設と醸造環境
ワイナリーの奥に進むと、縦型大型木樽「フードル」が目に飛び込んできた。その横にはステンレスタンクが並び、地下に降りると、建物と同等の規模を持つ広大なセラーが広がっている。貯蔵と熟成のためのスペースが豊富にあり、その規模に驚かされた。
セラーには数多くの木樽が並び、なかでも円錐型の木製発酵槽「トロンコニック」が印象的だ。これは、ボジョレーやブルゴーニュで用いられる「セミ・マセラシオン・カルボニック」という赤ワインの初期発酵に使用され、華やかな香りを引き出すためのものだ。
タンクには、茎付きのままの「全房」のブドウが入れられ、「ピジャージュ」という足で軽く踏む方法で破砕される。この作業では、ワイナリーのオーナー、アルターベルさんの小学生の娘さんが大活躍。軽い体重がちょうど良い力加減になるのだとか!(そういえば、山形のワイナリー「イエローマジック」でもこの作業は奥さんが担当していると聞いたことがある。)
試飲:30種類のワインを堪能
さまざまなタンクからワインを抜き出し、約30種類を試飲。白ワインが多めだった。
【白ワイン】
<アリゴテ>
最初に試飲した「アリゴテ」が素晴らしかった! 2024年と2023年の特定の畑のものを味わったが、非常にみずみずしく、酸がその味わいを引き立てていた。
アリゴテはかつてこの地域で広く栽培されていたが、シャルドネに比べ味が薄く酸が強いとされ、軽視される傾向にあった。しかし、ドメーヌ・デュランでは遅摘みと丁寧な選果を行うことで、この品種の魅力を最大限に引き出している。アルターベルさんは「他のワイナリーは早摘みしすぎる。アリゴテは最後まで酸が落ちないのに」と語っていた。
<シャルドネ>
続いて、いくつかのシャルドネを試飲。
◆Bourgogne Chardonnay “La Combe” 2024
1980年代にドミニクさんが植えた畑。樽で18カ月発酵し、2冬を超える樽熟成を行うことで、ワインの安定感が増すという。素直に美味しい!厚みのある味わいが印象的だった。
◆Saint-Aubin 2024 1er Cru En Remilly
1978年に前のオーナー、ドミニクさんが植えた「マーブル」と呼ばれる岩盤の土壌で、誰もブドウを植えなかった場所だという。塩気と酸味が強く、クリーンでパワフルな味わい。文句なしに美味しい!
2023年ヴィンテージも試飲したが、さらにまとまりがあり、素晴らしい味わいだった。
【赤ワイン】
◆ジュブレ・シャンベルタン 2023
果実味が豊かで、非常に美味しい!
◆ブルゴーニュ Les Riaux 2023
白い粘土や酸化鉄など、多様な土壌が反映された味わい。
◆サントーバン Le Ban 2023
ミネラル感と塩気が際立ち、熟成してもそのミネラル感が持続する。南向き斜面の畑で、ブドウの熟度も高い。
ワイン造りへのこだわり
試飲の合間に、アルターベルさんからワイン造りに関する興味深い話をいくつか聞いた。
◆「以前は涼しい気候で、9月上旬から後半にかけて収穫でき、2~3日のずれでも問題なかった。今は8月下旬が収穫時期で、1日ずれるだけでアルコール度数が変わるため、収穫日は厳密に決める。35人で一斉に収穫を行う。」
◆「還元臭は嫌われるが、発酵中はそれが酸化を防ぎ、長期熟成を可能にする。」
◆「良い年には芽かきを控えめに。過度に行うとワインが濃くなりすぎる。熟成と酸のバランスが重要だ。」
◆「テロワールを表現するため、年ごとのブドウの出来に合わせて極端に造りを変えない。」
◆「温度管理はしない。発酵が終わるまでじっくり待つ。」
◆「熟成前に粗い澱だけを取り除き、きれいな澱だけを残して接触させる。」
◆「買いブドウの『セクスタン』ブランドは、ドメーヌ・デュランが真面目に造るのに対し、攻撃的なスタイルで造る。」
ワイナリーの運営と工夫
現在、8.3haの畑を4~5人で管理し、剪定時期には季節労働者を雇用する。買いブドウの「セクスタン」ブランドにより資金繰りが安定し、人員を増やしたり、以前は24カ月だった熟成期間を48カ月に延ばしたりすることが可能になった。
また、ドメーヌのブドウ収穫がない時期でも、ネゴシアンとして買いブドウを活用することで経営が安定。良い循環が生まれている。
ワインの特徴まとめ
【白ワイン】
商業的でかっちりした仕上がりではなく、ブドウの力を最大限に引き出した自然派ワインらしいパワフルさと、みずみずしい酸が特徴。生命力にあふれ、後味は爽やかでまとまりがある。
【 赤ワイン(ピノ・ノワール)】
柔らかさと力強さを兼ね備え、複雑なアロマとテロワールの個性を表現。ナチュラルでピュアな味わいが魅力だ。
























































